大動脈弁狭窄症
症例の概要
犬
ゴールデンレトリバー
3歳5ヶ月
雄
他院で心雑音を指摘され、僧帽弁閉鎖不全症と言われた。失神することがある。聴診にて左側心基底部より駆出性雑音を聴取、心臓エコー検査にて大動脈弁下部狭窄とモザイク血流を認め、軽度の僧帽弁逆流と心房拡大(LA/AO 1.68)の合併も認めた。
大動脈弁狭窄症の病態、疫学、治療について
病態
左室流出路から大動脈に形成された狭窄により、左心系の駆出障害を生じる疾患です。狭窄部位により弁上部狭窄、弁性狭窄、弁下部狭窄とに分けられます。
中でも大動脈弁下部狭窄が最も多く、大動脈弁直下に線維輪を形成し、左室流出路を妨げます。これにより左室内圧が上昇し、左室や左房の拡大、心筋虚血などを起こし、関連して不整脈が発生することで失神や突然死が起こると言われています。
疫学
ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ニューファンドランド、ボクサーなどの大型犬に好発します。
治療
- 軽度な狭窄 治療の必要はありません。
- 中等度の狭窄 運動制限、β遮断薬などを使用します。
- 重度の狭窄 β遮断薬などの内科的治療、外科的治療を検討します。
治療経過
本症例は大動脈弁下部狭窄であるが、狭窄の程度は中程度と判断されたため、内科的治療を選択。
アテノロール、フロセミドを処方。今後、狭窄血流や臨床症状を注意深く観察する必要があります。