僧帽弁閉鎖不全症

症例の概要

トイプードル 10歳0ヶ月 去勢オス
3-4日前からむせるような咳。3回ほど失神のように倒れたことがある。聴診にて左側心基底部よりLevine3/6の心雑音を聴取、X線検査にて左房の拡大を認め、心臓エコー検査にて僧帽弁逆流と、僧帽弁の逸脱、左房拡大を認めたため、僧帽弁閉鎖不全症と診断。

僧帽弁閉鎖不全症の病態/治療について

病態

加齢に伴う僧帽弁の粘液腫様変性に基づく弁尖の変形、歪み、逸脱、腱索の伸展や断裂などによって弁尖閉鎖に障害をきたし、収縮期に左心室から左心房に血流が逆流する疾患です。

左心房への血液の逆流の結果、左心房及び肺静脈の圧が上昇し、肺における血液のうっ滞が起こります。この状態が続くと、心臓のポンプ力が低下したり、肺に水が溜まったりします(肺水腫)。

状態の程度は個々によって様々ですが、本邦でも米国獣医内科学会(ACVIM)の提唱する病態分類が利用されています。

ステージA心臓に器質的異常はないが、僧帽弁閉鎖不全症のリスクが高い犬(キャバリアなど)
ステージB1心臓に器質的異常があるが、無症状、画像検査にて一定基準以上の心拡大を認めない犬
ステージB2心臓に器質的異常があるが、無症状、画像検査にて一定基準以上の心拡大を認める犬
ステージC心臓に器質的異常があり、今までに心不全徴候があった、もしくは現在心不全徴候がある犬
ステージD心臓に器質的異常があり、標準的治療に難治性の犬
  • 器質的異常:形態的、解剖学的に正常とは異なること(見た目的に正常ではないこと)。

疫学

マルチーズ、チワワ、ヨークシャーテリア、トイプードル、ポメラニアン、シーズーなどの小型犬種に好発します
キャバリアは犬種特異的に、より早期に病態が進行する傾向にあります。

症状

当初は症状がなく、心雑音が聴取されるのみですが、進行すると咳などの症状がみられます。
肺水腫を呈すると呼吸困難となり、チアノーゼを起こしたり、命にかかわることもあります。

治療

  • 根本的治療 外科手術による腱索の補強、弁輪の縫縮を行います。
  • 対症療法 内服薬により心負荷をとる治療を行います。

治療経過

内科的治療を選択。

  • エナラプリル0.43mg/kg/BID
  • ピモベンダン0.43mg/kg/BID
  • スピロノラクトン1mg/kg/BID

で処方。
咳の症状は軽減しています。