仮性半陰陽

症例の概要

チワワ 9歳7か月
フィラリア検査(充実コース)で来院。腹部エコー検査にて腹腔内に3cm程の、充実性の腫瘤を認めた。卵巣腫瘍が疑われたため、翌週に手術を実施。左側卵巣は腫瘍化、右側卵巣部に精巣のような組織を認めたため、定法に従い卵巣子宮摘出手術を実施し、病理組織検査を依頼。片側卵巣部にセルトリ細胞腫、対側卵巣部に精巣組織を認めるといった結果だった。

半陰陽について

性分化疾患です。両性の性腺を兼ね備えたもの(精巣と卵巣の両方をもつ場合)を真性半陰陽といい、精巣もしくは卵巣のどちらかのみを持ち、内性器と外性器が一致しない場合を仮性半陰陽といいます。

この症例は外部生殖器は雌だが、性腺は精巣組織なので人で言う男性仮性半陰陽ということになります(見た目は女の子だが、中身は男の子)。
性染色体異常や、胎児の段階での母体のホルモン異常などによって起こるとされていますが、犬猫における発生率などに関する報告は少ない。

治療内容

この症例は卵巣部に腫瘍があったため、手術により卵巣子宮を全摘出。正確には、未熟な子宮と思われる組織と、両側卵巣部の精巣、精巣腫瘍を摘出。術式は通常の卵巣子宮摘出手術と変わりないが、この症例は子宮頸部を結紮離断する際、通常よりも組織が脆弱でした。

セルトリ細胞腫に関しては、注意深く経過を観察することとなりました。

注意!臓器の写真が表示されます

経過、考察

腫瘍の転移は今の所認めず、経過は良好です。今回は性分化異常が元々あり、卵巣部にあった精巣が腫瘍化していたという極めて稀なケースと言えます。オスの潜在精巣と同じように、今回のように性分化異常に関連した腹腔内にある精巣も腫瘍化しやすいのかもしれません。

男性仮性半陰陽の場合、発情出血が来ないことや、オスのような行動様式が受診のきっかけになるかもしれませんが、はっきりしないこともあり、受診〜診断は難しいように思います。

余談ですが、オーナーさんは他にも女の子のワンちゃんを2匹飼っており、この子だけ発情出血がなく、おしっこも足を上げてするので男の子だ〜、と言っていたようです。まさか本当に男の子だったとは思ってもいなかったでしょう。