エリテマトーデス

症例の概要

ラブラドールレトリバー 去勢雄 1歳3ヶ月
くしゃみをしている。抗生剤を使用したが、変わらずくしゃみをしている。鼻の色が抜けてきた。(5ヶ月前に両眼の周りが腫れ、鼻に膨隆が出来、包皮先端が発赤腫脹。若齢性蜂窩織炎と言われ、免疫抑制量でのステロイド投与により寛解した経緯があり。)身体検査にて左鼻先端部〜内外側にかけての色素脱/発赤/痂皮付着を認めました。過去の経過を踏まえて麻酔下にて鼻部を楔形に切り出し皮膚病理検査を実施。円板状エリテマトーデスと診断されました。

エリテマトーデスについて

抗核抗体などの自己抗体が免疫複合体を形成し、補体を伴って皮膚や各種臓器に沈着することで炎症疾患を惹起する疾患群です。全身性エリテマトーデスと皮膚型エリテマトーデスに大別され、皮膚型はさらに剥脱性、水疱性、円板状エリテマトーデスに分類されます。

円板状エリテマトーデスでは主に鼻鏡の色素脱、紅斑、痂皮形成を特徴とします。時に眼周囲や耳介部を含む顔面、口腔内、生殖器、四肢端への発症を伴うこともありますが、全身への拡大や内部臓器への異常を伴うことはないとされています。紫外線による悪化が示唆されている疾患で、屋外活動が多い場合は紫外線照射の強い春〜夏に悪化する傾向が見られます。

治療内容

円板状エリテマトーデスは内部臓器に異常を伴うことはないため、命に関わることはほぼ無いとされています。ですので、他の致命的な免疫介在性疾患と異なり、治療が上手くいかない場合はやり直しがききます。

上記の理由から外用薬などの局所療法も検討されましたが、オーナーさんと相談し、免疫抑制剤の投薬治療を開始しました。レフルノミド2mg/kg/SIDで処方。

紫外線は極力避けていただく方が望ましいのですが、この子はアウトドアなワンちゃんで、なかなか難しそうでした。治療効果などを見ながら相談していくことになりそうです。