急性大静脈症候群・犬フィラリア症

症例の概要

ミニチュアダックスフンド 7歳0ヶ月
元気がない、お腹が膨れてきた。血液検査にて再生性貧血、フィラリア抗原陽性、尿検査にて血色素尿、腹部エコー検査にて大量の腹水、心臓エコー検査にて右心房〜右心室内にフィラリア虫体を認めたため、フィラリア症に起因した急性大静脈症候群と診断されました。本症例はフィラリア予防未実施であり、外飼いの犬でした。

急性大静脈症候群について

フィラリアに濃厚感染した犬において、フィラリア成虫が三尖弁の血流を障害し、閉鎖を妨げることで急性に発症します。即座に虫体を除去しなければ2日以内に死に至ると言われています。沈鬱、呼吸困難、虚脱、血色素尿、可視粘膜蒼白などの症状が見られます。

治療内容

即座に虫体摘出手術を実施。
頸静脈より専用のブラシを挿入し、右心内にいるフィラリア虫体を絡め取る手術を行いました。
術後は2日ほどで退院しましたが、その後AHSガイドラインに基づいてメラルソミン3回投与による治療プロトコールを開始しています。

本症例は右心系や肺血管系に不可逆的な変化をきたしているため、おそらく生涯にわたっての治療が必要です。大切なワンちゃんを守るためにもフィラリア予防は忘れずにしっかり行いましょう。